従業員満足度があってこそ顧客満足度が実現するといわれるほど、相関関係が深いものです。
さらに、従業員満足度は、会社の業績や成長にかかわってくる重要な要素でもあります。
本記事は、従業員満足度と顧客満足度とはそれぞれ何を意味し、それらが向上することでなぜ会社の業績まで上がるのか、そして従業員満足度を高めるために、企業としてどんな取り組みができるのかについて解説していきます。
従業員が会社に愛着を感じて定着する優良企業へと成長していくための参考になれば幸いです。
Contents
従業員満足度とは?
従業員満足度とは、従業員が給与や待遇などの条件や、職場の働きやすさや仕事のやりがいなどといった面で、従業員がどれくらい満足しているかを示す指標です。
また、従業員満足度は「Employee Satisfaction」(エンプロイーサティスファクション)の頭文字をとってESと略されます。
そして、従業員満足度は最近ますます注目を浴びるようになっています。
では、どのような背景で注目されるようになったのでしょうか。
その点を次に説明していきます。
従業員満足度が注目される背景
従業員満足度に注目されるようになった背景は、優秀な人材が定着しにくくなったことが挙げられます。
理由として、転職への抵抗感が少なくなり一般的になったことや、副業が許されるようになり、人材が流動しやすくなったことです。
また少子化で労働人口が減少していることも重大な要因といえるでしょう。
厚生労働省も労働人口の減少が、今後ますます課題になっていくことを懸念しています。
さらに、多様性のある働き方がトレンドになり、フリーランスや業務委託で企業に属さない人も増えています。
こうした人材の流動・労働人口の減少・多様性のある働き方といった背景は、企業側に従業員が長く働きたいと思えるような職場環境を整備する必要を生じさせ、従業員満足度が注目されるようになったのです。
顧客満足度とは?
顧客満足度とは、購入した商品を買って良かったと思ったり、受けたサービスに感激したり期待以上だった場合など、顧客がどれほど満足したかを示す度合いです。
「Customer Satisfaction」(カスタマーサティスファクション)といい、頭文字を取ってCSと略されます。
商品開発、マーケティング、営業が、健全で状態がいいものかどうかを知る重要な手がかりとなります。
また顧客が今後も自社を利用するかどうかの決め手となるもので、業績に直結しているといえるでしょう。
顧客満足度を高めるメリット
顧客のロイヤリティが高まります。
顧客ロイヤリティが高まると、購入した商品やサービスを提供している企業に信頼感を抱き愛着を持ってくれるようになり、愛用するブランドとして今後もリピート購入し続けてくれるようになります。
また、高い評判は口コミで知り合いや家族、友人に広まり、新規顧客の獲得につながるでしょう。
実際のところ、新規顧客の多くは、口コミを参考に購入にいたるケースが多いのです。
このように、顧客満足度の高さは売上や利益を生み出し、業績アップに直結しているといえるでしょう。
顧客満足度を高める企業の6つの取り組み
顧客満足度を高めるため、企業は以下の6つに取り組めます。
- 接客に関する共通したマニュアルを作成し、人によって違う接客ではなく一貫したきめ細かい教育を施す。
- アンケートなど顧客にヒアリングを行い、顧客から直接、また定期的に顧客満足度を調査する。
- 顧客の心の奥にある潜在ニーズを掘り起こすため、顧客目線で商品やサービスを評価する。
- 顧客のニーズを把握し、期待値を超えるような商品・サービスを提供する。
- スムーズに業務効率化をはかるため顧客関係管理(CRM)システムを導入する
- 従業員満足度の向上があってこその顧客満足度であることを認識する
顧客満足度に関して下記の記事は参考にしてみてください。
顧客満足度の高い企業が実践する具体例!従業員教育の重要性を解説
従業員満足度が高いと顧客満足度と業績が上がるのはなぜか?
いくらいい商品やサービスを発案しても、従業員側が仕事に取り組む姿勢やサービスの提供にやりがいやモチベーションが低いと、その意識が顧客に伝わり説得力のない提供で終わってしまいます。
それでは売上や業績が向上しないのは目に見えていますね。
顧客満足度は従業員満足度あってこそ、実現されることがよくわかります。
ここでは従業員満足度が顧客満足度と業績アップに、いかに直結しているかについて4つの点から詳しく説明していきます。
- 生産性が向上し業績が上がる
- 顧客へのサービス水準が上がる
- 人材の流出を防ぎコスト削減になる
- サービス・プロフィット・チェーンが構築される
生産性が向上し業績が上がる
職場に不満がなく居心地がいい場合、従業員は仕事に前向きになり、業務に集中できますから生産性が向上します。
そして業務効率も良くなることで、「PDCAサイクル」が早く回り、課題も見つけやすく、素早い改善を図れるため業績も向上するでしょう。
そして目に見える嬉しい結果が返ってくると、従業員のモチベーションも高まり、生産性や業績アップにつながるという良い循環が生まれます。
その結果、市場における会社の信頼性も高まり、他者との取引も充実していきます。
こうして、競合への優位性が得られるようになり、売上も上がり競争に勝ち抜いていけるでしょう。
顧客へのサービス水準が上がる
従業員満足度が高まると、顧客へのサービスの水準が上がり質が良くなることで、顧客満足度が向上します。
従業員満足度の向上は、従業員エンゲージメントも高まってきます。
従業員エンゲージメントとは、仕事に示される愛着や貢献したいという意欲に現れ、企業と従業員との間の強いつながりを示します。
従業員は「自社の商品やサービスをより良いものにしたい」という自主的な願いを持つため、積極的に自ら課題をみつけ改善を図る努力を惜しまなくなります。
その結果、顧客へサービスの質に磨きがかかり水準も引き上げられるため、顧客からの評価がますます高まることでしょう。
人材の流出を防ぎコスト削減になる
従業員満足度の高い職場は居心地がいいため、優秀な人材は転職のリスクを抱えて離職することは少ないでしょう。
企業も求人広告を出したり面接したり、新入社員の教育などに時間をかけたり、コストをかける必要がなくなり本来の業務に集中できます。
また顧客側も人がコロコロ変わり、経験が浅いスタッフばかりだと、決していい印象にはならず、顧客満足度も下がってしまいます。
それが原因で客離れを起こすと、当然、業績も落ちる要因になるでしょう。
従業員満足度は、優秀な人材に辞められる打撃を防ぎ、やる気のある社員が定着して顧客に質の良いサービスが提供でき、業績アップにつながります。
サービス・プロフィット・チェーンが構築される
サービスプロフィットチェーンとは、「従業員満足度」「顧客満足度」「業績」が互いに関係しあっていることを示すビジネスモデルです。
これらの3つが良い循環を作ることで、企業の市場における競争力強め、成長を促します。
1994年にハーバードビジネススクールのヘスケット教授やサッサー教授が発表しました。
3つがどのように循環していくのかを下記の図で示します。
上記の相関図から、「従業員満足度」「顧客満足度」「業績」の3つが密接に関係しあっているため、良い循環を生み出すとおのずと企業は発展し成長していくことが理解できるでしょう。
従業員満足度を向上させる企業の5つの取り組み
従業員満足度を向上させるため企業はどのように具体的に取り組めるでしょうか。
以下に5つを紹介します。
- 企業理念とビジョンの共感
- 快適な職場の人間関係
- 適材適所のマネジメント評価
- 福利厚生などの職場環境の整備
- 社内コミュニケーションの活性化
企業理念とビジョンの共感
従業員満足度を上げるために、企業理念を浸透させビジョンを共感させるという下地作りが大切です。
なぜなら従業員が会社の理念やビジョンを理解し誇りを持てなければ、意欲を持った働き方ができないからです。
ですから、企業がどんな理念で経営しビジョンを持った取り組みをしているかを浸透させる必要があるでしょう。
また、従業員が企業理念に賛同し共感することは、従業員のエンゲージメントの育成にもなります。
従業員エンゲージメントは、従業員自らが業績向上に貢献したいという意欲や仕事のやりがいを抱くことになり、従業員満足度と大きな関わりを持つ重要な要素です。
快適な職場の人間関係
一緒に仕事をする仲間との人間関係が悪いと、従業員満足度の低下は顕著になり離職につながるでしょう。
同僚に関心を持ち成果を認めあう風潮を作ることは、互いを尊重し感謝しあえる気持ちを育みます。
また一人ひとりの従業員の役割がはっきりしていると、業務への責任感とチーム全体の協力関係が促進され、人間関係を良好にするのに役立つでしょう。
適材適所のマネジメント評価
組織の成功に大きな影響を与えるのが、従業員一人ひとりを評価し、適材適所に配属するマネジメント管理です。
従業員は自分の能力やスキルが正しく評価されていることがわかると、やる気とモチベーションは格段に上がり、従業員満足度も高まります。
従業員を正しくマネジメント管理すると、業務効率や生産性が向上し、組織全体を成長させ業績アップにつながるでしょう。
福利厚生などの職場環境の整備
従業員が働きやすい職場環境の整備は、従業員満足度に大きく貢献します。
例えば、新しい働き方の制度やシステムを導入したり、福利厚生やワークライフバランスを充実させる対策を図れます。
とくに、ワークライフバランスを取ることは、仕事と私生活を充実させストレスを軽減し心身の健康を守る結果となるでしょう。
結果として離職率が減り、業務効率と生産性を上げることになります。
また、報酬基準の見直しや、メンタルヘルスに配慮した福利厚生を取り入れるなどで、ストレスが軽減された安心して働ける環境づくりも大切です。
職場環境がよく整備されていることは、従業員満足度の向上につながるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化
従業員満足度を高めるためには、社内コミュニケーションの活性化は不可欠な要素です。
なぜなら、社内コミュニケーションが不足していると、企業理念を浸透させ、従業員が一丸となって同じビジョンで目標に向かう体制作りができないからです。
とくに、経営陣の思惑と現場の認識にズレが生じやすいため注意が必要といえるでしょう。
ズレを放置していると、社内は一致せず混乱していき、従業員のモチベーションは低下していきます。
そこで、経営陣から定期的に見解をWEB社内報で発信したり、従業員満足度を定期的に調査し、認識のズレが生じている兆しがないか確認する必要があります。
こうして組織の上と下の間のズレを生じないよう管理し、社内コミュニケーションを活性化していくことは、従業員満足度に大きく貢献することになるでしょう。
まとめ
従業員満足度が顧客満足度と業績に直結していることを解説してきましたが、その相関関係をご理解いただけたでしょうか。
従業員満足度が高い企業は、優秀な人材が定着し生産性や作業効率が上がる優良企業といえるでしょう。
本記事が従業員満足度を上げるための具体的な施策として参考になり、今後の企業の成長と発展に寄与しますよう願っています。
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