アシミレーションとは何で、組織を開発していくうえで、どんな役割を担っているのでしょうか。
本記事はアシミレーションの目的と、実施したらどんな場面があるか、そしてメリットには何があり、さらに失敗に終わらせないポイントについて解説していきます。
アシミレーションとは?
アシミレーションとは、社内環境を整えるために行われる組織開発の手段のひとつです。
アシミレーションとはどんな目的で実施されるのでしょうか?またスキップレベルと異なっている点について解説していきます。
上司と部下が互いを理解し合う手法
アシミレーションは「Assimilation」と英語で表し、「一体化」や「融合」という意味を持っています。
そして、ビジネスにおけるアシミレーションは、上司と部下が互いの理解を深め、チームとして一体化させることを目指して行われます。
アシミレーションの流れを簡単に説明すると、ファシリテーターという中立的な立場の仲介役が、まず部下だけで話を聞き、その後別室にいる上司と会って、取りまとめた部下の意見を伝えます。
こうして部下はファシリテーターを通じて、上司に関する率直な意見を述べる機会が得られます。
いっぽう上司は部下からどう思われていたのかを知る場となります。
アシミレーションは、互いの誤解を解いたり理解を深めたりして結束させ、一体感のある建設的な結果を生み出すでしょう。
スキップレベルとの違い
スキップレベルとアシミレーションの違いは、仲介役が異なっている点です。
アシミレーションはファシリテーターという社内でも第三者的な立場の人がなりますが、スキップレベルは上司の上司、例えば課長の場合は部長が仲介役になります。
アシミレーションもスキップレベルも、上司と部下の間の理解を深める点では同じです。
しかしスキップレベルの場合は、チーム内に不満がうっ積している時に、効果を発揮する手法です。
例えば、部長が部下から課長についての問題点を聞き、部長が課長に改善点を伝える形となります。
部下の言い分に耳を傾けることで、チーム内を一致した健全な状態に改善するのに役立ちます。
アシミレーションを実施したい場面
アシミレーションを実施したい場面を3つ取り上げて説明します。
- 新しい上司を迎えたとき
- 企業ビジョンを浸透させたいとき
- チームを活性化させたいとき
新しい上司を迎えたとき
新しい上司と部下が互いの思いを共有し、一致した関係を早いうちに築くためアシミレーションが使われる時があります。
上司が新しく赴任して、3か月から6か月を目途に行われることが多いようです。
例えば、新任の上司も部下に自分の考えを知らせたいと思っても、部下のことを良く知らないため、遠慮がちになるかもしれません。
部下も新しい上司のやり方に、すぐになじめないで困惑している場合も考えられます。
アシミレーションは、互いに様子見になって一体感が生まれにくい時に、早めに関係性を築くために貢献するでしょう。
企業ビジョンを浸透させたいとき
アシミレーションで、相互理解を深めるのは上司と部下の関係だけではありません。
企業全体のビジョンや理念を浸透させたい時にも活用できます。企業の社長や経営陣と社員の間で、相互理解を深めるためです。
社員にとって企業ビジョンは、具体性や明確性に欠けることが多く理解しにくい場合があり、形だけで終わっているケースがあります。
そこでアシミレーションは、社員の抱く疑問や不明点を浮き彫りにし、経営陣側の要望を明らかにすることで、企業ビジョンの浸透を助ける役目を果たします。
チームを活性化させたいとき
チーム全体が落ち着き、マンネリ化してきたと思える時に、アシミレーションが実施されることがあります。
今まで表面化しなかった問題が発見される場合もあり早期解決を図れます。
また新たな目標を掲げることに一役買い、チームを活性化するに貢献するでしょう。
アシミレーションの進め方
アシミレーションを進めるには手順があります。はじめの方で少し触れましたが、以下に詳しく解説します。
アシミレーション実施を伝え計画を練る
アシミレーションの実施を、上司に伝え同意を得る必要があります。
上司自身に厳しい意見が出ても、しっかり受け止める覚悟が必要で、それがないとアシミレーションをする意味がなくなります。
そのため、まずは上司にその点を確認したうえで、計画を進めていきます。
上司は退席しファシリテーターは部下の意見を匿名で引き出す
上司に退席してもらい、部下だけの5~6名の小さなグループに分け、匿名を約束して約60分~90分のディスカッションを行います。
例えば、上司に何を求めているのか、どうしてほしいか、何をしてほしくないか、また業務に関する日ごろ聞けないことなどの意見を引き出します。
部下と上司が入れ替わり上司は説明を受ける
ファシリテーターは、部下の匿名性を確保し、上司に対する質問や意見の内容を本人に冷静に伝えます。
上司は部下からの率直な意見に動揺するかもしれませんが、内容をしっかり受け止める器の大きさを示すようにします。
またファシリテーターも平静さを失わず中立の立場を守り、仲介役に徹することが求められるでしょう。
部下たちが入室し上司はコメントを述べる
上司は自分の行ったことが誤解されていると思った場合は、どんな意味で言ったのかを正しく伝え、誤解を晴らす機会を得られます。
また、部下から改善してほしい要望がなされたら「これからは○○のように努力する」と伝えられるでしょう。
このように、アシミレーションは上司と部下の間の理解や一体感を深めることに寄与します。
アシミレーションのメリット
アシミレーションには以下の4つのメリットがあります。
- 生産性が向上する
- 仕事の進め方のズレを調整できる
- チームに一体感が生まれる
- 職場環境を快適にできる
生産性が向上する
アシミレーションは、上司と部下の距離感を縮めコミュニケーションも円滑に進むことで、生産性の向上が期待できます。
例えば、上司が新しく赴任してきた場合などは、互いのことが分からず様子を見るために距離感が生じます。
距離感は互いの共通意識を育むのを阻害し、組織として一丸となって成長することを阻み、事業を停滞させてしまいます。
そのため、早いうちにアシミレーションを行い、相互理解を深めて一体感を生みだし、事業の効率性や生産性を向上させるようにしましょう。
仕事の進め方のズレを調整できる
ファシリテーターは中立を維持しながらも、部下の意見を伝える際に、上司に賢明なアドバイスを与えられます。
また部下には上司の仕事の進め方の意図を伝えることで、部下が納得することがあります。
さらに新しく赴任してきた上司が、以前の職場でのやり方を通そうとしている際も、部下の要望を聞くことで仕事の進め方のズレを調整できるでしょう。
アシミレーションを早いタイミングで行うなら、上司と部下の仕事や考え方のズレを調整して、円滑なチーム作りが期待できます。
チームに一体感が生まれる
上司と部下のコミュニケーションが円滑で共通意識を抱いて仕事に臨むなら、チームに一体感が生まれます。
チームの一体感は、何かトラブルや急な課題が生じた時、チームが一丸となって柔軟に取り組んで対処できます。
チームが一丸となれば、結束してスムーズにビジネススピードに乗っていけるでしょう。
チームの一体感は、速く変化する時代に即した対応をするために不可欠な要素です。
職場環境を快適にできる
アシミレーションによって、個々の意見が大切にされると、モチベーションの向上につながります。
オープンで透明性のあるコミニュケーションがある職場は信頼関係があり、働きやすい快適な職場環境といえるでしょう。
そうした職場は離職率の低下に貢献し、社会的に信頼のある会社として高い評価を得られます。
アシミレーションで失敗しないポイント
アシミレーションを実施するなら、上司と部下の相互理解を深めるという目的を達成して、ぜひとも成功をおさめたいものです。
以下に失敗しないための4つのポイントを解説したいと思います。
- ファシリテーターの選任が成否を分ける
- 部下たちの匿名性を守る
- アシミレーションの目的を明確にし建設的である
- 上司はあくまで前向きな場である認識を持つ
ファシリテーターの選任が成否を分ける
アシミレーションが成功か失敗に終わるかは、ファシリテーターの特性やスキルにかかっています。
どんなファシリテーターを選任すべきか、必要なスキルを考えてみましょう。
- 強固な中立の立場を保持する。
強く主張する意見に流されず、また上司という立場に偏らず、全ての参加者の意見を公平に扱える能力が必要です。
- 高いコミュニケーションスキル
アシミレーションで生じやすい誤解や対立を適切になだめて調整するには高いコミニュケーションスキルが重要です。 - 冷静に状況を分析する能力
対立や問題が発生した場合に、迅速で適切に解決策を提案する必要があります。
- 豊富なアシミレーション経験
アシミレーションの過程で起きがちな事例を、失敗や成功も含めた豊富な経験を持っていると、さまざまな事態に臨機応変に対応できます。
上記のようなスキルを持つファシリテーターが選任されることで、アシミレーションに参加する全員が満足できる結果を得て、成功できるでしょう。
部下たちの匿名性を守る
アシミレーションにおいては、匿名性を守ることで部下の安心感を確保し、本音で語っても安全である環境を整えることが重要です。
さらに匿名性にすることで、上司と部下との関係が悪くなることを防ぎます。
ファシリテーターは、上司に説明する際に、上司は誰が言ったのか知りたがったとしても、部下の匿名性を絶対に守らなければなりません。
また、部下からの率直な本音や意見の中には、ネガティブな内容の可能性もありますから、その後の業務に悪影響を及ぼさないようにする必要があるでしょう。
ファシリテーターが匿名性を守ることは、アシミレーションを成功させるために必須といえます。
アシミレーションの目的を明確にし建設的である
ファシリテーターは、アシミレーションの目的が、上司との相互理解を深めることを部下によく確認させておく必要があります。
アシミレーションの目的を見失うなら、上司への不満や悪口が飛び交う場となり、アシミレーションが失敗してしまう可能性があるからです。
(上司への不満がうっ積している場合は、前述したスキップレベルという会合があります。)
上司との理解を深めるため、率直であっても建設的な意見を出し合う場であることを銘記させることは重要です。
ファシリテーターは、チームが一体感をもって結束するために意見を交換しあって、健全なディスカッションが行われるようリードしていきましょう。
上司はあくまで前向きな場である認識を持つ
アシミレーションの実施は、上司にとっては試練となることがあります。
相互理解を目的としても、心地よい意見ばかりでなく、なかには痛烈な印象を与える意見も集まります。
そんな場合には、上司がショックを受けてしまう場合があるため、ファシリテーターは、あくまで前向きにとらえるよう説明し、上司のメンタル面への配慮も必要でしょう。
匿名性の約束もあるため、犯人捜しをしたくなる傾向を抑えるよう上司へのフィードバックが求められます。
まとめ
アシミレーションの実施によって、チームは相互理解を深められ、コミュニケーションが円滑になり一致した職場環境が実現できます。
とくに上司が着任して間もない時には、部下との関係もどこか「ぎくしゃく」していたかもしれません。
そうした時に威力を発揮するのがアシミレーションです。
アシミレーションを成功させると、個々の意見が尊重されることを知った部下は、モチベーションも上がり会社への貢献度が増すことでしょう。
アシミレーションを成功するかどうかは、ファシリテーターに依存している要素が多くあります。
ファシリテーターを賢明に選任し、効果的なアシミレーションで成功をおさめた結果、組織開発が促進され事業が発展することを願っています。
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