DXつまりデジタルトランスフォーメーションという言葉を耳にすることはありますが、具体的にはどんなことを意味しているのでしょうか。
単にAIを導入して社内をデジタル化することとは違うのでしょうか。
そしてDX推進指標とはいったい何の指標を示し、何を明らかにするのでしょうか。
企業がDX推進に取り組むことでうまれるメリットとはどんなことでしょうか。
本記事はそうした疑問点について解説しています。
さらに企業がDX推進に取り組み、自己診断を行って課題を乗り越え、DX推進を成功させる秘訣について記述していますので、最後まで読んでいただき企業の発展に役立ててください。
Contents
DXの定義
DXつまりデジタルトランスフォーメーションとは、企業全体においてデジタル技術の活用に取り組みビジネスモデルを変革することです。
その結果顧客の目線にたった新しい価値を生み出し、企業の競争力をアップさせ生き残りにかけた挑戦が行えます。
つまりDXへの取り組みは、デジタル化を事業の一部の業務に限るのでは意味がないのです。
なぜなら企業全体のビジネスモデルまで変革する必要があり、そうしてこそ新たな顧客ニーズに応えられるようになるからです。
DXによる変革は、市場でさらなる優位性を持った競争力の発揮を期待できるでしょう。
DX推進による企業のメリットと目標
DXを推進するメリットと目標は以下の4つです。
- 業務効率化と生産性向上
- データの有効活用
- 市場の変化に柔軟に対応
- DXの最終目標
業務効率化と生産性向上
DXを推進すると、デジタル技術を大いに駆使して業務を効率化できます。
デジタル技術が導入されていない時は、手作業で紙に記入し煩雑で複雑な仕事を、人の手でこなす必要がありました。
ですがデジタル化することで、クラウドでデータを一元管理したり、RPAの導入で同じ作業の繰り返しを行うパソコン業務を自動化したりが可能です。
また一部の業務だけでなく企業全体のムダを見直し合理化できるので、全社をあげて効率性を高め生産性の向上が期待できるでしょう。
データの有効活用
これまでにせっかく蓄積してきたデータを有効活用できずに眠らせていたということはないでしょうか。
また顧客リストなどのデータは部署ごとにバラバラに管理されているため、全体のビジネスに活用できずに終わっている状況も多くみられるかもしれません。
DXの推進で組織内のデータを一括で管理するシステムを構築されますので、活用されずに終わっていたデータがよみがえりビジネスに活用される結果になります。
さらにAIによって精度の高い分析を用いて、新たなビジネスチャンスの発見につながることも期待できるでしょう。
市場の変化に柔軟に対応
今や市場はデジタル化が進みライフスタイルも急速に変化しています。
それにつれ顧客ニーズもIT技術が期待されるようになり、よりデジタル化させる必要が生じています。
つまりDXでデジタル技術を導入して、市場の変化に対応し顧客のニーズにも素早く応え、新たなビジネスを創出していかなくてはならないという意味です。
DXはビジネスの変化と新たなニーズに柔軟性をもった対応ができるので、市場の競争力を強化するのに役立つことでしょう。
DXの最終目標
DXの最終的な目標は、ただ単にデジタル化を導入することではなく、「ビジネスモデルを変革し市場における優位性を得て競争力を高める」ことです。
ですからデジタル化は目的ではなく手段にすぎません。
企業が総力をあげデジタル技術を駆使して、DXの最終目標を達成していきましょう。
DX推進指標とは自己診断ツール
DX推進のための要件は、2019年7月に経済産業省より公表された『「DX推進指標」とそのガイダンス』で説明されています。
またDX推進指標は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提供する自己診断ツールです。
DX推進指標は、企業全体のさまざまな部門が一堂に集まり、それぞれの部門が持つ観点から、現状を把握し課題がどこにあるかを特定して、今後のために認識を深めることです。
さらに現状把握や課題認識にとどまらず、新たにニーズを発見し実現させるための対策を講じるように策定されています。
つまり自社がDXを進めていくために、どのようにすればいいのか、具体的な方向性を示す羅針盤のようなものです。
DX推進指標が生まれた理由と背景
政府がDX推進指標を公表した背景には、日本人はデジタルテクノロジーをうまく使いこなせていないことが原因にあります。
また多くの企業がDXに対して消極的な捉え方をしており、実践まで到達できない多くの課題を抱えていることも理由の一つです。
さらに経済産業省によると、日本企業のDX推進に対して以下のような消極的な傾向を指摘しています。
- 新たな価値を生み出す発想がなく、ただAIを使ってみることで満足してしまう
- 将来への危機感が企業で共有されず、変革への理解がない
- DXの推進の必要は感じていても、実現するための変革が伴わない
すなわち部分的にデジタル化を行っていても、DXの目的である「ビジネスモデルの変革」まで至らないという現状が存在しています。
DX推進指標の背景には、DX推進がなかなか進まない日本の現状が、悩みのタネとなっていることが理解できるでしょう。
DX推進指標の構成と成熟度
「経営面やITシステムのDX推進指標の構成」と、「DX推進のためどの程度の組織体制を整えているかの成熟度」について解説したいと思います。
DX推進指標の構成
参考:独立行政法人情報処理推進機構 「「DX推進指標」とそのガイダンス」より
上記の表にあるように、左は「経営のあり方、仕組みに関する指標」と右の「ITシステム構築に関する指標」が示されています。
日本企業が持つ課題や解決のためのポイントを押さえた構成といえるでしょう。
DX推進指標の成熟度
下記の表にあるように、DX推進指標の成熟度は6段階のレベルで示されています。
自社が組織体制の整備がどのレベルまで進んでいるかを評価し、さらに上のレベルを目指し改善に取り組むための指針となります。
レベル | 状態 |
レベル0「未着手」 | 経営者はDXに無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない |
レベル1「一部での散発的実施」 | 部門単位での試行・実施 |
レベル2「一部での戦略的実施」 | 会社戦略に基づく一部の部門での推進 |
レベル3「会社戦略に基づく部門横断的推進」 | 会社的な取り組みとなり、部門横断的に実施 |
レベル4「会社戦略に基づく持続的実施」 | 定量的な指標による持続的な実施、組織ややり方の改善が継続的 |
レベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」 | グローバル競争を勝ち抜くデジタル企業 |
DX推進には、自社の成熟度を正確に把握するため、嘘偽りなく正直に判断する必要があります。
成熟度の指標を目安に自社がどの程度DXが推進されているか見直すことで、次に解決すべき課題が明白になってきます。
ただし、DX推進指標の成熟度では、すべての項目でレベル5を目指すことは求められていません。
なぜなら企業の状況はさまざまで、DXで成長させたい事業によって異なるからです。
ですから自社の目標に合わせて最適なレベルを目指すのは大切だといえるでしょう。
DX推進指標の自己診断を行って成功させる秘訣
DX推進指標を使って自己診断をおこなうには以下の5つの段階があります。
それぞれの段階を踏むことで、DX推進を成功させていきましょう。
- 現状分析
- 認識の共有
- 行動計画の策定
- 実行と進捗管理
- 継続的な改善
現状分析
DX推進を成功させるため、まず「現状分析」が重要なカギです。
自社がIT化を推し進める目的は何か、そのために何が必要かについて分析し、徹底して課題を明白にする必要があります。
そうした現状分析することなくDXを推進すると、特定のITツールを導入しても最大限の有効活用はできず、単なるデジタル化で終わってしまいます。
まずDX推進指標を用いて現状分析するため、経営面とITシステム面の両方から正当な評価を行ってください。
現状の良い面や課題となる点を明らかにして次のステップに進みましょう。
認識の共有
DX推進は、社内全体の総力をあげて進めなければ効果がありません。
そのため、さまざまな部門の関係者同士で、現在のDX推進状況や今後の課題について議論し認識を共有する必要があります。
議論するに際し、それぞれの部門があらかじめ自己診断を行って臨むなら、議論から充実した結果を得られ、生じやすいギャップを解消し認識を共有しやすくなるでしょう。
行動計画の策定
DX推進を成功させるため、社内で議論し課題を明白にしたら、実際にDX推進を遂行するための行動計画が策定されなければなりません。
DX推進指標の自己診断を行う際、項目ごとに点数をつけることで満足し、その後必要な対策に向けた努力がされないなら、DX推進の成功はおろか企業の新たな価値を生み出せずに終わってしまうでしょう。
たとえば議論したあとの行動として、DXを推進するための人材確保やAIを用いたデータ分析システムの導入を検討するなどが想定されます。
DX推進指標の自己診断をもとに、具体的な行動計画を策定するのはDX推進を成功させるための秘訣の一つです。
実行と進捗管理
明確な行動策定の計画を立てたとしても、実行されなければ意味がありません。
つまりDXを推進していくために、どのように計画が実行されているか進捗状況を管理することが大切です。
たとえば翌年度にDX推進指標の自己診断を再度行い、行動がどの程度まで達成されているかを再確認できるでしょう。
なおDXの推進は短期間だけで終わるものではありません。数年がかりで取り組むことを覚悟して行うもので、中長期的な視点が必要となってきます。
ですからDX推進指標を年度ごとに診断し続け、DX推進が実行されているかを確認し、進捗状況を管理することは重要だといえます。
継続的な改善
DX推進は継続して改善していかなくてはならない多くの点があります。
デジタル技術の進化に伴い、常に最新の技術を取り入れ業務を改善し続けないといけないからです。
また企業の競争力も激化しています。業務の効率化や生産性の向上で競争に打ち勝っていくことも大切になります。
そして顧客のニーズの変化に応じ市場に柔軟性をもって対応するためにも、改善は継続する必要があります。
さらにリスク管理としてセキュリティ対策やシステムトラブルがおきる予測もする必要があります。
そうしないと古いシステムをそのままにしておくのは危険だからです。
従業員のデジタルスキルの向上もDX推進には不可欠で、従業員研修で継続的にスキルアップが必要になります。
こうしてDX推進に継続的な改善がなされることも成功の秘訣といえるでしょう。
まとめ
デジタルトランスフォーメーションを推進する指標で自己診断を行うことは重要なことです。
自己診断で明確になった課題を実行していくことで、企業全体のビジネスモデルが変革されていきます。
それにより企業が発展していくための新しい価値が生み出され、顧客視点でのニーズに応えて市場での競争に打ち勝てるでしょう。
それこそDX推進がもたらす成功といえるものです。
しかしDX推進は継続して改善していくべきもので、中長期的な視点が必要となります。
DX推進指標による自己診断も継続して行い続けることで、新たに生まれる課題に取り組んでいきビジネスモデルの変革を成し遂げていけます。
さらに今の日本の現状が必要としているのは、企業全体をあげてDX推進に向けて取り組む努力といえるでしょう。
デジタル化に疎かった状態から脱却して、DX推進に向けて変革を遂げるなら、日本の企業の成長にもつながります。
企業がDX推進指標を活用して自己診断し、課題に取り組むことで市場の競争に打ち勝ち、成功されることを願っています。
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