社員の心の状態をケアすることは、企業の大切な役割のひとつです。
そこでメンタルヘルス研修が注目されています。
社員のメンタルの不調をいち早く気づき、適切に対処することで、社員の退職や休職を防ぎます。
メンタルヘルス研修とは何か?どんな研修内容なのか?
企業にとってどんなメリットがあるのか?
メンタルヘルス研修を導入するか悩んでいる企業の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
Contents
メンタルヘルス研修とは何か?
「メンタルヘルス研修」とは、心の健康を維持するために必要な知識を学ぶ、またケア方法について学ぶ研修のことです。
職場や仕事でのストレス・不安・悩みなどによって、社員の心の健康状態が崩れてしまう場合があり、メンタルヘルス研修を導入する企業が増えています。
心の健康や病気についての理解は、十分とはいえず、理解を深めるためにも導入が必要なのです。
また、メンタルヘルス研修を導入する目的について解説します。
目的
導入する目的は、以下のような目的です。
- 心の健康や不調について正しく理解するため
- ケア方法について理解するため
- 心の健康を維持するための職場環境を構築するため
企業全体として、心の健康について理解を深める、正しい対応について知ることが主な目的となっています。
メンタルヘルス研修を導入するメリット
導入するメリットは複数あります。
社員の心の健康を維持できるだけでなく、企業全体にもメリットがあるのです。
ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか、解説します。
導入を検討する際の重要なポイントです。
早期発見につながる
大きなメリットとして、挙げられるのが「メンタルヘルス不調者の早期発見につながる」ことです。
心の不調や病気は、気づきにくいものですが、知識や対処法を知っておくことで、早く気づける可能性が高まります。
早期発見することで、社員に必要なサポートまたは治療を受けさせることが可能です。
そのためには、研修を受けているかどうかが、大きなポイントとなります。
社員の離職を防げる
次に、「社員の離職を防げる」のもメリットです。
社員にとって、働きやすい環境や仕事のやりがいは、重要なポイントとなります。
研修を通して、社員の心の健康を維持するためのサポートを行えば、働きやすい環境を構築することが可能です。
働きやすい環境を構築することで、社員の離職を防げます。
生産性の向上に期待できる
社員や管理者がメンタルヘルスに対して、正しく理解して対処法を学ぶことで、モチベーションを維持できます。
モチベーションを維持することで、生産性の向上が期待できます。
さらに、心の健康を維持できれば、社員のパフォーマンスの向上にもつながります。
このように、社員だけでなく、組織全体にメリットがあるのです。
メンタルヘルス不調の主な原因
メンタルヘルス研修を導入するメリットについて解説しました。
ここで押さえておきたいのが、メンタルヘルス不調の主な原因についてです。
いくつかの原因がありますが、原因を知ることで、どのように対応すればよいのかが見えてきます。
とくに、管理者や経営者は理解しておきたいポイントです。
人間関係
メンタルヘルス不調の大きな原因の1つは「人間関係」で、具体的には次のような関係性になります。
- 同僚
- 部下
- 上司
- 顧客
「同僚と意見があわない」「上司からのプレッシャーが厳しい」「顧客に怒鳴られる」など、仕事での人間関係により、メンタルヘルス不調になってしまうのです。
また、同僚や上司に悩みを相談できないような環境でも起こりやすくなります。
社員がストレスを抱え込まない、相談しやすい環境が大切です。
さまざまなハラスメント
それから、以下のようなハラスメントもメンタルヘルス不調の原因となります。
- パワハラ
- セクハラ
上記のようなハラスメントを受けることで、「会社に行くのが嫌になった」「働く意欲を失った」などの状況につながります。
従業員を守るためには、十分な対策を実施することが求められます。
関係者の周知徹底はもちろんですが、被害を受けた人をサポートできるように、相談窓口を設置するなどの対応が必要です。
労働環境
その他に、「労働環境」も大きく関係しています。
具体的には、「長時間労働」や「休みが少ない」などです。
長時間労働で、毎日のように残業をしているような状況では、心の健康を維持することは難しくなります。
さらに、身体と精神的な疲労がたまり、仕事のパフォーマンスも低下する可能性が高まります。
メンタルヘルス不調を放置するリスク
従業員の様子がおかしいと感じても、そのままの状況にしていませんか?
「そのうち元気になるだろう」「少し休ませれば大丈夫」など、安易に考えてしまう人もいます。
しかし、放置するリスクは非常に大きなものです。
病気のリスクを高めるだけでなく、社員が退職してしまう事態も考えられます。
具体的に「どのような病気のリスクが高まるのか」を知ることが大切です。
うつ病
心の健康を維持できない場合に、起こる可能性のあるのが「うつ病」で次のような症状が特徴となります。
- 憂鬱な気分が続く
- イライラしたり、怒りやすくなる
- 疲れやすくなる
- やる気が起きない
- 集中力が低下する
このうつ病は、約15人に1人がかかる病気[U1] です。
うつ病の社員を放置すれば、休職や退職につながり、人員不足となる可能性があります。
早期発見や早期の適切な治療が必要です。
[U1]https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html 参考元
不安障害(パニック障害)
不安障害の代表的なものが、「パニック障害」で、次のような症状が表れます。
- 動機や心拍数の上昇
- 体の震え
- 吐き気
- 恐怖心
- 胸の痛みや息苦しさ
精神的な面の不安によって、パニック発作が起こる病気です。
一般的には、数分から10分程度でピークに達してその後、数分から数十分で症状が治まります。
パニック障害の原因は、解明されていませんが、大きなストレスが原因の1つと考えられているようです。
適応障害
ストレスが大きく関係していると言われているのが、「適応障害」で自分が置かれている環境に適応することができない状態となります。
職場であれば、就職や転職、別の部署への移動など、環境が大きく変わる際になりやすいものです。
人によって、症状は異なりますが、次のような症状が表れるケースが多くなっています。
- 気分の落ち込み
- 緊張
- 倦怠感
- めまい
また、業務量の増加や新しく大きな仕事を任せられるなど、責任が大きくなった場合にも適応障害になる可能性があるのです。
依存症
さらに、注意しておきたいのが「依存症」で、依存症は自分で制御ができない状態となってしまいます。
代表的な依存症は、以下のとおりです。
- アルコール依存症
- ニコチン依存症
- 薬物依存症
- ギャンブル依存症
- ネット・ゲーム依存症
依存症の厄介な点は、そのままにしておくと症状がどんどんと進むことで、業務にも大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、ギャンブルをするために、会社の金を横領する、顧客の金を横領するなどが実際に起きているのです。
過去1年間にメンタルヘルス不調で1か月以上休業・退職した労働者のいる事業所割合は13.3%
厚生労働省の資料である、「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」[U1] によれば、過去1年間にメンタルヘルス不調により、連続1か月以上休業・退職した労働者がいた事業所の割合は、13.3%となっています。
また、同資料によれば、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、退職者がいた事業所の割合は5.9%です。
さらに、産業別で見てみると、該当する労働者がいたと回答した産業では、「情報通信業 36.3%」「電気・ガス・熱供給・水道業28.2%」「金融業・保険業24.8%」となっています。 このような産業では、とくに社員の心の状態に注意が必要です。
[U1]出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf 厚生労働省
メンタルヘルス研修で提供されるプログラムについて
研修で提供されるプログラムは、同じではありません。
それぞれの目的や立場にあったプログラムを提供しています。
ここでは、どのようなプログラムが提供されているのか、について見ていきましょう。
選択する際の判断にもなります。
新入社員向け
新入社員の場合は、学生から社会人へと変わる大きな環境の変化です。
そのため、学生時代には経験してこなかった、大きなストレスやプレッシャーを感じることがあります。
また、慣れない業務をこなす、覚えることが多く思い通りにいかないことも多くなるはずです。
社会人として、長く働くために、ストレスと上手に付き合う方法やケア方法について学びます。
ケア方法では、睡眠や生活習慣についてもアドバイスを受けることが可能です。
一般社員向け
一般社員向けの研修は、新入社員向けのものとは少し異なります。
メンタルヘルスの重要性や現状、職場でのストレスの要因や対処法について学ぶことが多いです。
それから、職場におけるコミュニケーションについても触れることがあります。
同僚や上司、部下との必要なコミュニケーションを知り、メンタルヘルス不調の予防を行うというものです。
管理職向け
管理職向けの研修は、新入社員向けや一般社員向けのものとは、大きく異なります。
その大きく異なる点とは、部下への対応について学ぶことです。
自分だけではなく、部下のメンタルヘルスについての理解を深め、適切な対応を行い、良好な環境を構築することが目的となります。
また、研修内容によっては、社員が相談できる環境づくりや復職支援の方法についても学ぶことが可能です。
管理職の仕事は、部下をまとめるだけでなく、部下の心の状態についても定期的にチェックすることが求められます。
メンタルヘルス研修の効果を高めるための要点とは?
メンタルヘルス研修とは、「とりあえずやっておけばよい」と思っていませんか?
残念ながら、ただ行っただけでは十分な成果を期待することはできません。
そこで、重要となるのが効果を高めるための要点についてです。
このポイントを押さえておくことで、高い効果を期待することができます。
労働者だけでなく経営者にも理解させる
高い効果を期待するには、従業員だけを対象にしてはいけません。
従業員だけを対象にするのではなく、管理者や経営者も対象として研修を行うことが重要です。
従業員だけが、メンタルヘルスに関する理解を深めても、管理職や経営者がその重要性について理解していなければ、適切な対応ができなくなってしまいます。
どちらか一方ではなく、企業全体で研修を受けることが必要です。
目的や導入する理由を明確にする
いくら導入すると言っても、すぐに受け入れてもらうことは困難となります。
従業員・管理職にスムーズに受け入れてもらうには、導入する目的・理由・狙える効果を明確にすることです。
「何のために行っているのか?」「受けた後にどのようなメリットがあるのか?」を示すことで、受け入れてもらいやすくなります。
実施する前に、従業員や管理職に対して説明を行うと効果的です。
定期的に計画の策定や見直しを実施する
職場の状況・環境というものは、変化していきます。
そのため、以前とは異なる状況になる場合もあるのです。
異なる状況では、必要な対策も変わりますので、定期的に計画の策定・見直しが必須となります。
状況を正しく分析にして、「どのような対策が必要であるか?」「社員がどのようなところに不満を感じているか?」を理解して、適切に対応することが求められるのです。
まとめ
メンタルヘルス研修とは、心の健康について学ぶことや心の健康を維持するために、必要な対処法について学ぶことです。
メンタルヘルス不調になってしまうと、うつ病やパニック障害、適応障害や依存症などのリスクが高まります。
また、研修は従業員だけが受ければよいというものではなく、管理職・経営者も受けることが重要です。
それから、研修にはさまざまなプログラムがあり、立場によって適切なものを選択する必要があります。
新入社員向け・一般社員向け・管理職向けなどがあるので、適切なものを選びましょう。
さらに、プログラムの内容についても、提供する団体・企業によって異なるため、内容についても適切であるかを判断することが大切です。
従業員の心の健康を維持するためにも、メンタルヘルス研修は非常に重要となります。
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