組織

ストックオプション制度とは?企業と従業員双方のメリット・デメリット

最近では、ストックオプションを導入する企業が増えています。なぜなら、企業側と付与された側のどちらにもメリットがある魅力的な制度だからです。

さらにストックオプションをうまく活用することで、会社の業績アップに貢献します。

では、ストックオプションの導入に向いている企業とはどんな企業でしょうか。

そして企業側と付与された従業員側のそれぞれのメリットには何があるでしょうか。

一方で、ストックオプションにデメリットはないでしょうか。

本記事はそれらの疑問の解決を目指し、ストックオプションを検討している企業の方はぜひ最後までご覧ください。

ストックオプション制度とは?

ストックオプション制度とは、企業が経営陣や従業員、社外協力者の特定の対象者に、将来の決められた期間内に、決められた価格で自社株を購入できる権利を付与する制度です。

期間内であれば、自身の都合の良い時に株を購入できますし、購入した株はそのまま持っていてもよく、または株価が高くなった時に売って利益も得られます。

例えば、ストックオプションの権利が与えられた場合を想定したとします。

権利を与えられた5年後に購入できる条件があったとして、5年後に購入を決めたとすると、購入価格は5年前に定められた金額で1株1000円であり、5年後の購入時には3000円になっている場合、差額の2000円がキャピタルゲインつまり利益となります。

しかし自社株があまり上がっていない場合は、ストックオプションの権利を行使せず、株式がもっと上がるまで購入を控えておくべきでしょう。

ストックオプション制度で株式を購入する際には条件があり、数量も無制限ではありません。

しかし、ストックオプション制度は、権利を与えられた者に損失が出ない報酬といえるものであり、企業が注目している福利厚生の一環です。

参考までに、ストックオプションと似ている新株予約権は、新株予約権はストックオプションのように付与される対象が限定されていませんので、一般投資家でも誰でも取得できるという違いがあります。

ストックオプション制度の導入が向いている企業

ストップオプションを導入している自社株を評価している

ストックオプション制度の導入を検討して迷うことがあります。
向いている企業は以下の2種といえます。

  • 上場を目指すベンチャー企業
  • 上場している企業

なぜ上記の2種が向いているか理由を知ることは、導入についての判断がしやすくなるでしょう。

以下に理由を解説していきます。

上場を目指すベンチャー企業

ベンチャー企業で上場を目指している場合、将来性のある発展途上にあり、ますます成長する可能性を見込めるため、その株式も大いに魅力的といえます。

ベンチャー企業の多くは、ストックオプション制度を導入することで将来性を広く宣伝でき、優秀な人材を確保するのに役立てています

さらに有望なベンチャー企業が上場すると、社会的に高い評価を得て企業価値が増し、株価が数十倍と上がる可能性があるといえるでしょう。

ストックオプション制度の活用で、会社と権利行使者の両方にメリットがもたらされます。

また、ストックオプション制度は、資金力が乏しいベンチャー企業にとって有利といえるのです。

なぜなら、株式公開のタイミングで報酬が支払えるため「後払い」できるからです。

上場を目指す将来性のあるベンチャー企業なら、ストックオプション制度の導入を検討するといいでしょう。

上場している企業

すでに株式上場している場合は、株式そのものに価値があります。

さらに企業が将来有望な事業に取り組もうとしている場合は、ストックオプションの対象者にとって、飛びつきたくなる制度です。

上場企業のなかには、社員のやる気と株価が連動し業績もアップしていく場合もあります。

そんな場合ストックオプションは、優れた人材確保のために取り入れたい制度といえるでしょう。

なお、ストックオプションは報酬に相当し、インセンティブを付与する際に用いられています。

ストックオプション制度の企業側のメリット

株価を把握するためタイミングを探っている

ストックオプション制度の企業側にもたらされるメリットを3つ解説します。

  1. 優秀な人材の採用
  2. 会社の業績をあげる
  3. 社外協力者が確保でき関係を維持できる

ストックオプション制度は、将来的に株価が値上がりし、値上がり幅によっては大きな利益を生じさせます。

さらに優秀な人材には評価に応じたインセンティブとなり魅力的な制度となるでしょう。

またストックオプションを行使する前に辞めると、株を売却して得られる報酬がもらえないため、人材を引き留めておく手段となります。

その間に優秀な人材がやりがいを見つけて、企業に愛着を持ってもらうことで離職を防げるでしょう。

企業にとっても人件費として計上しなくてよいので節約となり、優秀な人材にはインセンティブとして成果を認める手段となります。

結果として、ストックオプションは、優れた人材採用には欠かせない制度といえます。

ストックオプション制度は、会社の業績が上がるほど自社株の価格も上がり、利益も大きくなります。

企業の成功は自身の利益と直結しているため、チームが一丸となって業績アップのために協力しあうようモチベーションが高められます。

そして、協力的な職場環境は、効率的な業務が進行することになり、会社の業績アップにつながります。

また、一人ひとりも営業成績を上げ、仕事に対して自発的に責任感をもって取り組む結果となることでも、業績がアップすることになるでしょう。

ストックオプションを付与する対象者は、自社の関係者だけでなく、社外協力者も含まれています。

社外関係者には顧問やアドバイザー、専門家や有識者といった、会社に有益なアドバイスをくれる存在も多数いることでしょう。

ストックオプションを付与して、権利行使まで長期的で双方に都合のよい協力関係を維持できます。

また社外協力者にも会社に対して当事者意識を持ってもらえ、会社の業績アップや新事業展開のためにモチベーションが向上し協力してもらえることが期待できます。

ストックオプション制度の従業員側のメリット

ストップオプションでモチベーションをあげた社員

ストックオプション制度は権利を付与された従業員側にもメリットがあります。

メリットとして以下の3つを解説します。

  1. 権利を付与された従業員にリスクが少ない
  2. モチベーションの向上と個人の利益
  3. 税負担の割合が低い

権利を付与された従業員にリスクが少ない

通常の株式投資は、初期投資をした後、株価が下落しないか心配する負担を抱え、実際に下落し損失がでたりします。

ストックオプション制度は、将来に自社株を購入できる権利にすぎないため、権利を付与された従業員には、心理的なストレスやリスクが少ないのがメリットです。

すなわち、ストックオプション制度では、権利を付与された時の価格より株価が落ちている場合は、株を購入しなければ損失は生じないわけです。

いっぽう株式投資の場合は多額の初期投資が必要ですが、ストックオプションは株の購入に際して権利を付与された時に、安く設定された株価の代金を支払うだけで済みます。

そのため、ストックオプション制度の対象者や従業員には、リスクが少ないといえるでしょう。

モチベーションの向上と個人の利益

ストックオプション制度は、会社の業績がアップすることで、社員にインセンティブとして報酬に反映し還元されます。

その結果、会社に一層貢献しようというエンゲージメントの向上を期待できるでしょう。

会社の業績はアップし、社員の貢献度は正しく評価され個人の利益も増大するので、会社にとっても社員にとってもメリットといえます。

税負担の割合が低い

ストックオプションで得た利益は報酬とみなされますが、給与所得と違い税負担の割合が低くて済むのもメリットです。

ストックオプション制度で株を売却し大きな利益が出ても、20.315%の税負担で済みます。

しかし給与となると最高で55%を課税されますから、大きな差といえるでしょう。

ただし「税制適格ストックオプション」の要件を、満たしておくことが必要ですので注意してください。

参考:経済産業省ストックオプション税制

ストックオプション制度を導入するデメリット

株価が上がる時もあるが下がる時もあり、社員のモチベーションにつながる

ストックオプション制度は、会社と対象者にはリスクが少ない制度ですが、デメリットもあります。

以下の4つのデメリットに気を付けてください。

  1. 株価が下落すると社員のモチベーションが下がる
  2. 権利行使後に従業員が離職する
  3. 付与基準が不明瞭な場合、従業員に不公平感が発生する
  4. 既存の株式の下落を招く

株価が下落すると社員のモチベーションが下がる

ストックオプションは、株価が上がると当然利益になる見込みはありますが、下落すると損にはならない一方で、利益にもなりません。

株価の変動は予測しておくべきですが、思った以上に下がると、社員のモチベーションまで落ちるデメリットがあります。

ストックオプション制度の権利を行使している場合ならなおさらでしょう。

必ずしも株価が上がる保証はないため、優秀な人材が離れる可能性も生じます

また退職金をストックオプションの売却で得た利益を充てる場合は、自社株の下落は将来に対する不安材料になり、当然モチベーションは下がってしまうでしょう。

権利行使後に従業員が離職する

ストックオプション制度で、自社株が上がってから権利を行使して売却益を得た場合に、社員が会社にいる目的を失い、モチベーションが下がり離職することがあります。

社員の早期の離職を防ぐため、ストックオプションの権利を行使するまで、5年ほどの期間を定め、それまでは会社に引き留めておく条件を付けておくことはおすすめです。

優秀な人材が、権利を行使して利益を得ても、会社にやりがいを見つけさらに貢献したいという、愛社精神を育てる必要もあるでしょう。

そのための企業側の努力も問われるところです。

付与基準が不明瞭な場合、従業員に不公平感が発生する

ストックオプションを付与する基準には、従業員の過去の業績や企業への貢献度などによって評価され権利が付与されることがあります。

しかし付与基準が曖昧で不明瞭な場合には、付与されなかった従業員が理由がわからず、不満を抱いたり不公平感を抱いたりするのは当然です。

さらに、やる気をなくす原因にもなり、付与された社員とされなかった社員の間に軋轢が生じ、関係性の悪化までつながる可能性が生じます。

これにより、組織の一体感にヒビ割れが発生し、全体のモチベーションが下がるなどして、業績にも悪影響を及ぼしてくるでしょう。

社員が不満を抱かないためにも、ストックオプションを付与する条件を明確にすることは、重要なことです。

既存の株式の下落を招く

ストックオプション制度で、会社が付与する権利をどれくらいにするかの基準はなく、それぞれの会社の判断に任せられています。

しかし、ストックオプションを付与する割合が多すぎると、既存の株主の持ち株比率が低下して価値を減ずるため、株主の利益を損なう結果となります。

そのため一般的には、ストックオプションの割合を全体の5%~15%ほどに抑える企業が多くみられます。

まとめ

ストックオプション制度は、企業側にも権利を付与される従業員側にも、メリットが多い制度です。

しかしデメリットもあり、株価の下落で社員はやる気を失ったり、権利を行使して利益を得た後、すぐに離職されてしまうなど、企業側には痛手となる場合もあります。

しかし、将来性のある企業にとっては、ストックオプション制度を通じて業績を向上させ、事業を発展させられる可能性の高い魅力的な制度といえます。

ストックオプション制度のメリットとデメリットを十分に考慮しながら、導入を検討してみてください。

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記事の監修者
   ビジネストレーニング事業部
   

ビジネストレーニング事業部

社員研修の専門家チーム。数多くの研修プログラムを開発し、中小企業から大手企業まで200社以上の実施実績がある。 それらのノウハウをまとめた「ビジネスパーソンのためのボトルネックブレイクⅠ」「ビジネスパーソンのためのボトルネックブレイクⅡ」等の著書も出版している。